本と生活

サニーデイ・サービス、初の単行本『青春狂走曲』2017年8月30日発売!!

サニーデイ・サービス、結成25年の総決算、初の単行本をついに刊行! 2017年8月30日! オンライン書店予約スタート!

2017年8月27日、ワンマンLIVE<サニーデイ・サービス サマーライブ2017>ー 日比谷野外大音楽堂にて、特別先行発売!!

「そっちはどうだい うまくやってるかい」

日本ロック史上屈指の名盤と名高いアルバム『東京』(1996年)を発表し、はっぴいえんどの再来と言われ、音楽ファンから絶大な人気を得たバンド、サニーデイ・サービス。2000年に解散するも、2008年に再結成を遂げ、2016年にリリースされた10thアルバム『DANCE TO YOU』は新しいリスナーにも熱狂的に迎えられた。そして2017年6月2日、全22曲トータル85分からなる最新アルバム『Popcorn Ballads』を突如ストリーミング配信オンリーで発表。Apple Music J-POPチャート第1位を獲得するなど、更なる狂騒を巻き起こしている。

 

デビュー当時から彼らと並走してきたライターの北沢夏音が、40時間に及ぶロングインタビューを敢行。メンバー3人、それぞれの25年間と波乱に満ちた人生を追う。音楽とは、バンドとは、生きることとは。かつての若者たちへ、今日を生きる若者たちへ。

サニーデイ・サービス、初の単行本『青春狂走曲』2017年8月30日発売!!

青春狂走曲

サニーデイ・サービス/北沢夏音

2017年8月30日

本体2,300円(税別)

四六判並製函入 432頁
ISBN:978-4-909048-01-1

サニーデイ・サービス/北沢夏音

サニーデイ・サービス

曽我部恵一(vo,gt)、田中貴(ba)、丸山晴茂(dr)による3人組ロックバンド。1994年メジャーデビュー。1995年に1stアルバム『若者たち』をリリース。以来、「街」という地平を舞台に、そこに佇む恋人たちや若者たちの物語を透明なメロディで鮮やかに描きだし、その唯一無二の存在感で多くのリスナーを魅了し続けている。2016年、10thアルバム『DANCE TO YOU』、2017年6月2日、全22曲85分からなる最新アルバム『Popcorn Ballads』をApple Music、Spotifyにてストリーミング配信スタート。FESへの出演やツアーなどライブ活動も積極的におこなっている。8月27日に、日比谷野外大音楽堂でのワンマンLIVE <サニーデイ・サービス サマーライブ 2017>の開催が決定。

 

北沢夏音(きたざわ・なつを)

1962年東京都生まれ。ライター、編集者。1992年、雑誌『Bar-f-out!』を創刊。著書に『Get back,SUB! あるリトル・マガジンの魂』、共著に『次の本へ』、『冬の本』、『音盤時代の音楽の本の本』等。他に『80年代アメリカ映画100』の監修、山口隆対談集『叱り叱られ』の構成、寺尾紗穂『愛し、日々』、森泉岳土『夜のほどろ』の企画・編集、『人間万葉歌 阿久悠作詞集』三部作、ムッシュかまやつ『我が名はムッシュ』、やけのはら『SUNNY NEW BOX』等のブックレット編集、執筆も手がける。

編集後記

編集後記『青春狂走曲』対談・北沢夏音×森山裕之

 

「青春狂走曲Ⅰ」――駆け抜けた90年代

 

北沢 この本に収録されている「青春狂走曲Ⅰ」(以下「Ⅰ」)の連載って、ぼくと森山くんのどっちが言い出した企画なんだっけ?

森山 正確に覚えていないんですが、どちらからともなくだった気がします。

北沢 「Ⅰ」は2002年9月から2003年2月にかけて雑誌『クイック・ジャパン』(以下『QJ』)で全4回連載したんだけど、このときって森山くんは編集部に入ったばかり?

森山 はい。元々『QJ』にライターとして関わっていて、2001年夏に編集部に入ったので、その1年後に始まった連載でしたね。サニーデイ・サービスは自分の人生にとって本当に大きな存在だったので、前年の年末に解散してからぽっかり大きな穴が開いてしまった気持ちでした。太田出版に入って「Ⅰ」の連載時、資料協力等で大変お世話になった羽田茂美さんに会うんです。彼は曽我部さんとは立教大学のサークル「CLUB DJ」時代からの友人で、当時、太田出版で単行本の編集者をされていました。羽田さんに、曽我部さんが三宿のクラブWebでDJをやるということを聞いて、一緒に行こうということになったんです。その夜Webで、北沢さんと偶然お会いしたんですよね。

北沢 確かにそこで意気投合した覚えはあるんだけど、サニーデイのルポをやろうと最初から言ってたのか、それとも話しているうちにそうなったのかな?

森山 その夜は結構盛り上がって、「北沢さん、改めて打ち合わせさせてください」と言って別れたと思います。この本に掲載されている雑誌『Bar-f-out!(バァフアウト!)』のインタビューも、『QJ』の特集「『NOW』のあとさき」のインタビューも何度も何度も読んでいたから、北沢夏音の名前は焼き付いていました。後日、北沢さんが当時住んでいた木場の隣駅、門前仲町のドトールで待ち合わせをしたら、念の為1時間前には行っていたんですが、待ち合わせ時間より1時間くらい遅れて北沢さんがやって来て……「北沢夏音」の洗礼を受けました。

北沢 そんなことあったっけ? いきなり不穏な話が……。

森山 懐かしい思い出です。

北沢 時間はどちらかの勘違いじゃない? えーっと、それはともかく、サニーデイが解散してから、1年が経とうとしていたわけだよね。森山くんと偶然会ったのは杉浦(英治/SUGIURUMN)くんとKINK!さんが主催していた“VEGAS”というイベントで、曽我部くんもレギュラーDJだった。当時の曽我部くんはそんなにライブとかはやっていなかった気がする。

森山 やってないですよね。「ギター」も発売される前でした。

北沢 VEGASで会ったとき森山くんが、「自分がいちばん好きなバンドはサニーデイ・サービスなんです」と言っていたね。それは覚えている。

森山 そうお伝えしました。

北沢 それまでぼくは赤田(祐一)さんが編集長の時代の『QJ』で村八分のヴォーカリスト、チャー坊のルポ(「草臥れて チャー坊〈村八分〉の生と死」)をやって、そのあと北尾(修一)さんが編集長の時代に望月(充)くんとザ・ヘアーのルポ(「ヘアー!――モッズ族。あるいはトーキョー・ヤング・ソウル・レベルズ」)をやったりもして、ある人物やバンドを通して彼らを中心とするシーンや文化全体をドキュメントする企画を度々やってきていたんだよね。だからもしかしたら、サニーデイをルポするには、解散からまだそんなに時間が経っていない、いま取材しないと、リアルな感じで記録できないかも……みたいな話になった可能性もあるよね。

森山 そう、北沢さんとの最初の打合せで、その年にピチカート・ファイヴを解散したばかりの小西康陽さんと曽我部さんの対談(「日本語の音楽で夢中になれるものが聴きたい」『QJ』40号/2001年12月)を企画しました。それが曽我部さんのソロデビュー・シングル「ギター」のレディメイド・インターナショナルでの発売に繋がる。その経緯は、この本にも収録されている「WHAT THE WORLD IS WAITING FOR.」という、「ギター」のライナー・ノーツとして発表された文章に詳しく描かれています。その後、北沢さんとは『QJ』42号(2002年4月)で「小西康陽の特集」を一緒にやって、44号(2002年10月)から「Ⅰ」の短期集中連載を始めます。

「サニーデイ・サービス、その後。」というサブタイトルをあの連載に付けたのは、曽我部さんがソロのファーストアルバムを作っている頃だったし、田中貴さんがスクービードゥーのマネージャーを始めたりして、サニーデイ後の各々の活動が始まった頃で、元メンバーの現状と、サニーデイ・サービスとはなんだったのかを描こうとしましたよね。

北沢 でも「青春狂走曲」というタイトルを付けたのは、なぜだったんだろうね?

森山 タイトルを付けたのは北沢さんでした。

北沢 まあ、確かにぼくだと思うんだ。「サニーデイほど青春という言葉が似合うバンドはない」みたいなコラムを、1998年のツアーパンフにも書いている。だから、彼らを表すワードとして「青春」が絶対に必要だという確信があったんだろうね。それこそ90年代が終わると同時に解散したわけだから、ひとつの時代を駆け抜けたって感じだよね。そういう意味でも「青春狂走曲」がいちばん相応しい、と考えたんだと思う。そして昨年、その15年後の続編として本を作ろう、という提案が森山くんから来たんだよね。

 

『DANCE TO YOU』――昨日の続きのように

 

森山 『DANCE TO YOU』は発売(2016年8月3日)の翌週、ようやく買いに行けて、一聴して衝撃を受けました。再結成以降の2枚とは明らかに違うと思った。『本日は晴天なり』も『Sunny』も、サニーデイ・サービスの新しいアルバムをまた聴ける幸せを噛みしめ、安らかな気持ちで聴いたんだけど、『DANCE TO YOU』にはとにかく興奮した。“いま”を強烈に感じた。その後、8月9日に配信された「CINRA.NET」の曽我部さんへの北沢さんのインタビュー(本書収録「DANCE TO YOU」)を読んで、その日のうちに北沢さんに連絡しました。

ネット上にあるインタビューって、インタビュアがあまり語らない、Q&Aみたいなものばかりじゃないですか。誰がやっても同じような。でも北沢さんのインタビューは、対話になっていた。『QJ』を辞めてから10年近く北沢さんと仕事はできていなかったけど、変わらない方法論で、それが批評的で面白かった。いまの時代に読者に新鮮に映るんじゃないかとも思いました。このインタビューを基調音にして本にできると思った。ちょうどこの年に版社を立ち上げていましたし。

北沢 本のイメージが湧いたんだね。単なるQ&Aに留まらず意見交換の場にするというのは、ぼくがインタビューの仕事を始めたときから意識しているアプローチなんだ。

森山 「Ⅰ」をベースに、『QJ』の「『NOW』のあとさき」や、それ以前の「Bar-f-out!」の記事等も入れて、書き下ろしも加えれば、北沢さんから見たサニーデイ・サービスの本が作れると思った。

サニーデイが再結成すると聞いたときも、サニーデイの本は作りたいと思って曽我部さんに会いに行きました。当時、北沢さんやライターの磯部涼にも相談しましたが、そのときは各誌の取材記事を網羅したり、複数の書き手によるムック的なものを考えていました。その後、丸山晴茂さんが体調を崩し、本の話自体進まなかったのですが、僕の中でサニーデイ・サービスの本を作りたい気持ちはずっと続いていました。そして昨年、『DANCE TO YOU』を聴き、「CINRA」のインタビューを読んで、「これだ! いまだ!」と思った。

北沢 そう思ってくれたのは有難いな。ぼくは「Ⅰ」の完成度には自信があったし、このまま雑誌に埋もれさせておくのはもったいない、という気持ちがあって。最初はどこで会って打ち合わせたんだっけ?

森山 新宿の喫茶店<マローネ>でした。ご連絡した後すぐに。

北沢 そうだ、マローネだ。会って、そう言われたときはすごく嬉しかったんだけど、いまの時点で取材したものも加えようという話になって、バタバタと企画が立ち上がったんだよね。そしてその年の12月に取材が始まる。

森山 その間に構成案を作ったり、僕自身出版社を立ち上げて1年目でしたから、営業のこと等あらゆる準備が並行してありました。スタンド・ブックス1冊目の前野健太『百年後』も同時に編集している時でした。『百年後』の方針が見え、年明けに出そうと決めて、2冊目はサニーデイ・サービスと北沢さんの本にしようと考えた。最初は2016年の12月に取材を終わらせて、翌年の3月に出そうと話していましたよね。

北沢 ROSE RECORDSの前に、まず渡邊(文武)さんに相談したんでしょ?

森山 そうですね。『DANCE TO YOU』のクレジットに、渡邊さんが入っていたことに驚いたんです。

北沢 「director」というクレジットだったね。サニーデイと渡邊さんがまたジョイントしてる! と思って、確かにぼくも驚いた。

森山 第1期サニーデイ時代、僕はライターでも編集者でもない、ただの純粋なリスナーでした。完全に音源派で、ライブも観ようとしなかった。この音源に録音されているこの音楽、この世界を愛していました。だから解散ライブにも行かなかった。だから渡邊さんとは「Ⅰ」の取材で初めてお会いして、それ以降の彼の活動の中でお付き合いしていくことになりました。『QJ』で山下達郎さんの特集を企画するとき、最初に話を繋いで頂いたのも渡邊さんでした。

北沢 そうだったんだ! 当時、渡邊さんは達郎さんの事務所に在籍していたものね。定期的に新宿の喫茶店<らんぶる>でミーティングをしていたんでしょ?

森山 サニーデイの話やその時どきの音楽や本の話をずっとしていました。それで今回ようやく渡邊さんとサニーデイ・サービスの仕事ができると思って、最初にご相談をしました。僕も吉本興業に転職して、『QJ』でよく一緒にやっていた人たちとの繋がりがぷっつり切れていました。渡邊さんとも久々でそれこそ十年ぶりくらいに連絡して、<らんぶる>は広い地下の席が禁煙になっていたから、近くの喫茶店<西武>でお会いしました。「CINRA」のインタビューではないですが、まるで昨日の続きみたいに話が止まりませんでした。

北沢 渡邊さんとは、いつ会っても不思議と変わらずに話せる。ぼくも渋谷クラブクアトロのライブ終演後に、しばらく会ってなかったけど普通に『DANCE TO YOU』の話をしたな。そのときも「『LOVE ALBUM』の次ができたと思った」みたいなことを言っていたね。

 

「青春狂走曲Ⅱ」――すべての人に平等に20年

 

北沢 2016年の年末に約1ヶ月かけて、この本に登場する全員に計40時間の取材をした。やりながらすごく手応えがあったんだ。これはいい本になるぞ、って。そのあとに映画『T2 トレインスポッティング』(2017年/監督:ダニー・ボイル)を観たんだ。

森山 ありましたね、その事件が。

北沢 それで「これをやるしかない!」と思ったんだよね。

森山 北沢さんから「『T2』は観た方がいい」という連絡をもらい、観に行って、おっしゃっている意味がわかりました。

北沢 わかったでしょ。まさにこの本って、『トレインスポッティング』じゃないかと思ったんだ。『T2』は、本国イギリスはもとより日本でも渋谷のミニシアターの動員記録を塗り替えるなど大ヒットを記録した前作『トレインスポッティング』(1996年)からちょうど21年後の続篇なんだよね。メインキャストの登場人物4人が、約20年経って外見はだいぶ変わったけど、中身は全然変わっていないし、事態はより一層泥沼化しているともいえる。1990年代と2010年代では彼らを取り巻く環境も社会状況も激変している。青春が終わっても人生は続く。だからこそ、生きることってなんだろう、という根本的な命題について、ものすごく考えさせられるじゃない。トレスポに主演したユアン・マクレガーは曽我部くんと同じ1971年生まれという同世代感もあって、華やかなりし90年代ユースカルチュアの象徴というべき『トレインスポッティング』とサニーデイの軌跡が重なったんだよね。そして必然的に、ぼくらもまた、あれから二十歳年をとった自分自身を重ねることになる。だからこれはそういう本になるし、しなきゃいけないと思った。

森山 昨年末すべての取材を終え、テープ起こしを頼んで、それを何人かで手分けして粗構成をしてもらっていました。あとは北沢さんが手を入れ、書き原を加えるだけの状態。すでに当初の3月という発売予定は過ぎ、今年の5月の連休の1週間、事務所にカンヅメに来てもらって、全原稿を仕上げて頂くつもりでした。それが第1期カンヅメ期間でしたね。

北沢 ……話の雲行きが怪しくなってきた。

森山 築50年の一軒平屋の事務所の隣りが、いま東京では珍しいボール遊びOKの公園で、連休の昼間、ボールが飛んで来て事務所の窓ガラスが割れて、北沢さんが目覚めるという事件もありましたね。

北沢 確かカンヅメの初日じゃない? 「スタンド・ブックス」の洗礼を受けました……いまどきあり得ない『サザエさん』のような話だよ。

森山 第1期カンヅメ期間が終わり、原稿は終わらなかったんですが、他の仕事もあり一度ご自宅に戻られたんですよね。電話で話すと、「今回のカンヅメは構成の全体をじっくり読めたことに意味があったけど、やっぱり俺が『T2』を書かなきゃいけないということが判った」と。それを聞いて、電話をしていた渋谷の街で愕然としたのを覚えています。いつ本になるんだと。

北沢 言ったね、「『T2』にしないと意味がない」って。

森山 ただそう言われて、僕もそれしかないな、と思っちゃったんですよね。そっちの方が面白いって。だから、愕然としたと同時に、まあ仕方がないかと腹を括りました。その後1ヶ月は他の仕事でカンヅメができなくて、6月から8月中旬まで、延べ2ケ月半の第2期カンヅメ生活が始まる。

北沢 最後の方は二人とも消耗しきってボロボロになっていたね。それにしても「Ⅰ」はよくあの内容を連載でやったよ。他の記事も書きながら、4回連載で1度も落とさなかったし。

森山 しかも、相当凝った作りにしていました。

北沢 凝っていたね。だから「Ⅱ」もそれくらい凝ったものに仕上げたかったんだけど、やり切れなくて残念というか……敗戦の弁を語る監督みたいな感じになっているけど。

森山 それも含めて『T2』ってことじゃないですか。

北沢 そうだね。

森山 すべての人に平等に、確実に20年という時が経った。

北沢 要するにもうあの頃の体力はない。もはやポンコツなんだという。情けないね、そういう結論になって。

森山 でも一方で、「『NOW』のあとさき」の頃と今回の録り下ろしでは、取材、原稿ののレベルが違うことを実感したともおっしゃっていましたよね。

北沢 うん、20年前より今回の方が濃い取材ができているとは思った。

森山 だから、その時にしかできない取材だったし、原稿なんだと思います。

北沢 彼らが話してくれたことを記録した結果、それがそのまま『T2』になっているとも言えるかもね。

 

『青春狂走曲』――葛藤、足掻き、その先にある希望?

 

北沢 3人それぞれ人生の変転が見事にあって、驚いてしまうね。「ギター」のライナー・ノーツでは、曽我部くんの家に泊めてもらった夜に奥さんのモモちゃんが話に加わっていると書いてあって、そんなときもあったんだな……って。

森山 赤ちゃんだったハルコちゃんも高校生になっている。

北沢 いまや事実上のシングルファーザーとして3人の子供を育てながら、こういう過酷な、自分を追い込むようなレコーディングをやってさ。曽我部くん……やっぱりとんでもなくすごいなと。この間(2017年6月25日)、16年振りに開催したイヴェント“自由に歩いて愛して”にもソロで出てもらったんだけど、そこでも改めて驚嘆させられた。1曲目の「さよなら!街の恋人たち」とか、その場にいた全員がぶっ飛ぶようなものすごいギターストロークで始まって、ギターが壊れて木っ端微塵になるんじゃないか、みたいな迫力でさ。1995年の秋にサニーデイとしてそのイヴェントに出てくれたんだけど、あれから22年間の経験値の積み重ねがあって、アーティストとしての成長と厚みを感じた。一方で田中くんはラーメン評論家としてプチブレイクしつつ、いまのサニーデイの状態にも悩んでいて。晴茂くんはまさに『T2』状態で、アルコール依存から立ち直れずに離脱しちゃっている。やっぱり20年経つといろいろなことが起こるけど、それでもまだサニーデイ・サービスというバンドが続いていて、なおかつ晴茂くんの復帰を待つ間にも先に進むんだ、という覚悟を曽我部くんが決めている。

そこで『Popcorn Ballads』という破格のスケールのアルバムをまた作って、さらに配信オンリーみたいなチャレンジをする。なんかサニーデイ・サービスって、本当に他にない特異なバンドになっているよね。普通は再結成したらさ、昔のファンを相手にゆっくりやっていくような感じになるじゃない。特に21世紀以降の再結成はそういうものが多かった。だけど、サニーデイ・サービスは全然違う。メジャーでやる選択肢もあったけど、ローズでやることを決めて。もちろん晴茂くんの体調の問題に対応し易いようにとか、様々な要因はあったと思うんだけど。

森山 この本のタイトルは少なくとも昨年末に取材をしていた頃にはまったく見えていませんでした。5月の第1期カンヅメのときだったかな、北沢さんから「やっぱりタイトルは『青春狂走曲』しかないんじゃないか」と言われた。90年代の曲だし、連載もそのタイトルだったし、40代の3人のいまが「青春狂走曲」ってどうなんだろう、もうちょっと違うタイトルはないかなと、最初は正直思いました。だけど、これまでの取材を読み返し、原稿を全部並べてみると、ああ、年齢とかじゃなくて、いまでも「青春狂走曲」やっている、やっぱりこのタイトルしかないなあと。サニーデイの曲「青春狂走曲」の一節「そっちはどうだい うまくやってるかい」が、過去の自分、そして未来の自分へ問いかけているような気持ちになりました。

北沢 森山くんが最初に企画書を書いたとき、「朱夏」という言葉を使っていたよね。「青春」に対応するかたちで「朱夏」も描くというイメージだったと思うんだけど。普通は確かに、人生ってそういうものとされているよね。若く未熟な青春時代を経て、人生の盛りの時期である壮年時代は年齢相応に熟して収穫の時期を迎えるはずなんだけど、サニーデイ・サービスに限ってはそうじゃない。

森山 ということが、よくわかりました。

北沢 やっぱり『トレインスポッティング』なんだよね。『T1』と『T2』を貫いて、「Choose your future. Choose life.(未来を、人生を選べ)」というメッセージが登場人物たちと観客の両方に繰り返し突きつけられる。勝ち組になるためにあれやこれやと選択し続けるのが人生だと多くの人が思い込んでいるけど、「だが、それが何になる?(But,Why would I want to do a thing like that?)」と呟く場面が必ず訪れるのも人生だという皮肉が、ブーメランのように返ってくる。でも、自分の未来を選ぶのは自分しかいない。サニーデイも、ぼくらも、そこは同じなんだ。何歳になっても相変わらずな部分がありつつ、もがきながら、でも前を向いて最後までやれるだけやってやる、みたいなさ。

森山 そしてサニーデイは、90年代の作品に決して劣らない、いまの時代に対応するすごいクオリティの作品を出し続けている。

北沢 そういう意味では曽我部くんって、怪物だと思うね。あれだけ量産できる人は、そうそういない。あとROSE RECORDSという自主独立を貫ける場を作った意味が、ますます出てきている。曽我部くんはいつも「サニーデイにはヒット曲がない」と嘆くけれど、その生き方とか活動の仕方とかも全部含めて、後続の世代のロールモデルになっているよね。サニーデイ・サービスって不思議なバンドだけど、この先もまたいろんなドラマがありそうで、もしかしたら「青春狂走曲」の続編も作れるかもしれない。

森山 この本も現在進行形でしかないですからね。

北沢 だからいつまでも完結しない。結成25年という節目のアニバーサリー本という要素もあったと思うんだけど、ニュアンスとしてアニバーサリー感が薄い。

森山 アニバーサリーな内容じゃないですよ。

北沢 お祝い感ゼロ。途中経過報告でしかない。要するにその時々のドキュメントを繋ぎ合わせて編集した本なんだよね。リチャード・リンクレイター監督の恋愛映画で、同じ俳優(イーサン・ホーク、ジュリー・デルピー)を継続的に主演に起用して、一組の男女の出逢いから始まる関係性の推移を現実の時間経過と重ね合わせた、他に比類のないシリーズ作品があって、『ビフォア・サンライズ 恋人たちの距離』(1995年)、『ビフォア・サンセット』(2004年)、『ビフォア・ミッドナイト』(2013年)と一定の期間をおいて続篇が作られている。作り手も演者もこの映画に人生を捧げるぐらいのロングスパンで向き合わないと成立しないという意味では、この本もちょっと似ている。こういう本って珍しいというか、果たしてこれまでにあったか? という気がするよね。

森山 あのシリーズはぼくも大好きです。ゲラを読んでいて、こんな本は読んだことないと思いました。

北沢 少なくとも音楽本では初なんじゃないかな。解散したバンドの歴史を辿る本はたくさんあると思うんだ。あと、何十周年を迎えました、というアニバーサリー本も普通にあるじゃない。これはそのどれとも違うよね。

森山 内容も不穏だし。

北沢 まあね。不協和音をそのまま収録しちゃっているところがあるから。でも、きれいごとじゃない分リアルだし。たとえばラモーンズとかニューヨーク・パンクのドキュメント本とかを読むと、人間ドラマとしてものすごくリアルなんだよね。そういうものと比べて日本の場合は、きれいに馴らし過ぎている気がする。なんでもかんでも明るみにすればいいってことではないかもしれないけど、葛藤とか足掻きとか、失意の先にある希望とか、そういった人生そのものに肉薄した音楽本があっていいんじゃないか? ということは、ずっと思っていることなんだ。

森山 それはジャーナリズム側にもアーティスト側にも、両方に原因がある気がします。これは、北沢夏音とサニーデイ・サービスだからこそ成立した本だと思いました。

北沢 ありがとう。めったにない機会を作ってくれた森山くんには心から感謝してます。そういう意味では、1995年に出会って22年。ぼくとサニーデイの関係性の産物、という面はあるかもしれないな。ファーストアルバムで出会って、ここまで信頼関係を築けたのは、本当に幸運としか言いようがない。

森山 曽我部さんからも、北沢さんが考え抜いた文章、タイトルであればそれでいい、と言われました。お祝いとか、良く見せようとか、伝説にしようとかそういうことではない人間の姿、人生と音楽のドキュメント。結果的に、そういう本になりましたね。現時点でまだ、原稿全部上がってないですけど!

 

(2017年7月23日日曜日深夜/石神井公園STAND! BOOKSにて/構成協力:森田真規)

 

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